Excelの顧客リストにある表記ゆれや重複をChatGPTだけで整理できるのか検証。120件のデータを実際に処理し、修正済みExcelまで作成。正解データと比較すると5件の誤統合も判明しました。実務でどこまで使えるのかを検証結果とともに紹介します。
Excelで顧客情報を管理していると、いつの間にか同じ会社が複数登録されていたり、会社名や電話番号の書き方がバラバラになっていたりすることがあります。
たとえば、
- 「株式会社」と「(株)」
- 電話番号のハイフンあり・なし
- 担当者名のスペースあり・なし
- メールアドレスの大文字・小文字
といった違いです。
数件なら人間が確認できますが、数百件、数千件と増えてくると、一つずつ見比べるのはかなり大変です。
そこで今回は、表記ゆれや重複候補を含む120件の顧客リストをChatGPTにそのまま渡し、データ整理から修正後のExcel作成まで任せてみました。
さらに、ChatGPTが作ったExcelをあらかじめ用意していた正解データと比較して、
「本当に正しく整理できているのか?」
まで確認します。
結論からいうと、表記ゆれの発見やExcelの整理はかなりできました。
しかし、人間が確認すべきデータを5件誤って統合する結果にもなりました。
実際にどこまで任せられたのか、詳しく見ていきます。
今回、ChatGPTに任せる仕事
今回用意したのは、架空の顧客情報をまとめたExcelです。
顧客IDのほか、
- 顧客名
- 都道府県
- 住所
- 担当者
- 電話番号
- メールアドレス
- 備考
などが登録されています。
全部で120件あります。

一見すると普通の顧客リストですが、中には同じ会社・同じ担当者なのに表記方法が違うデータや、重複している可能性があるデータが含まれています。
また今回は単純な表記ゆれだけでなく、**「似ているけれど、本当に同じ顧客なのかは人間が確認した方がいいデータ」**も含めました。
ChatGPTが単純に似ているデータをまとめるだけなのか、それとも判断が難しいものを「要確認」として残せるのかも検証します。
実際にExcelをChatGPTに渡してみる
ExcelファイルをChatGPTに添付し、表記ゆれや重複候補の整理を依頼しました。

今回、実際に使用したプロンプトはこちらです。
顧客情報を管理しているExcelがあります。
このExcelには、同じ会社や同じ人物なのに表記が違っているデータや、重複して登録されているデータが含まれている可能性があります。
Excelファイルを実際に確認したうえで、データを整理してください。
以下について対応してください。
- 会社名、担当者名、住所、電話番号、メールアドレスなどの表記ゆれを探してください。
- 同じ会社・同じ人物と思われるデータが複数ある場合は見つけてください。
- 明らかに同一だと判断できる表記ゆれについては、表記を統一してください。
- 同一かどうか判断が難しいデータについては、勝手に統合せず「要確認」としてください。
- どのデータをどのように変更したのか分かるようにしてください。
- 修正後の顧客リストをExcelファイルとして作成してください。
判断するときは、会社名だけでなく、住所・電話番号・メールアドレスなど複数の情報を確認してください。
判断できないものについては推測で断定せず、その理由も説明してください。
最後に、
・どのような表記ゆれがあったか
・重複している可能性があるデータ
・人間による確認が必要なデータ
・今後このような表記ゆれや重複を防ぐための改善方法を初心者にも分かるようにまとめてください。
今回は「(株)を株式会社に直してください」「電話番号のハイフンを統一してください」といった具体的な修正方法は指示していません。
どんな表記ゆれがあるのかを見つけるところからChatGPTに任せています。
ChatGPTは3分35秒で修正後のExcelを作成
Excelとプロンプトを送信してから回答が完了するまで、今回の検証では約3分35秒かかりました。
※処理時間は今回の検証時に計測した参考値です。Excelの内容やサイズ、利用環境などによって変わる可能性があります。
ChatGPTから返ってきた結果は、
元データ120件 → 整理後75件
でした。
ChatGPTの説明によると、40グループ・45行を「明確な重複」と判断して統合したとのこと。
さらに、判断が難しいデータについては**25件を「要確認」**として抽出していました。

それだけではありません。
元のExcelを残したうえで、新しく、
- 修正後顧客リスト
- 変更履歴
- 要確認
- 整理サマリー
というシートを追加したExcelまで作成してくれました。
「変更履歴」を確認すれば、どの顧客IDを、どの顧客IDへ統合したのかまで確認できます。
回答だけを見ると、かなり完成度が高そうです。
表記ゆれはかなり細かく見つけられた
ChatGPTが発見した主な表記ゆれは、
- 「株式会社/㈱/(株)」の違い
- 会社名や担当者名に含まれる空白
- 「東京都/東京」など都道府県表記の違い
- 電話番号のハイフン有無
- メールアドレスの大文字・小文字や前後の空白
などでした。
こちらから具体的に「この表記を探してください」と指示していなくても、自分でExcelを確認して見つけています。
さらに今後の改善策として、
- 顧客IDを一意のキーとして管理する
- 新規登録時に電話番号やメールアドレスから既存データを検索する
- 都道府県をプルダウン入力にする
- 電話番号やメールアドレスの入力形式を統一する
といった方法も提案してくれました。
単純に文字を置き換えるだけではなく、なぜ表記ゆれが発生するのか、その後どう防ぐのかまで提案してくれた点は便利だと感じました。
ところが、答え合わせすると問題が見つかった
ここまではかなり順調です。
ChatGPT自身も回答の中で、
判断が危険なものは統合していません。
と説明していました。
しかし、生成されたExcelをあらかじめ用意していた正解データと照合すると、問題が見つかりました。
今回の顧客リストは、正しく重複を整理すると80件が残るように作成しています。
一方、ChatGPTが作成した修正後の顧客リストは75件でした。
正解:120件 → 80件
ChatGPT:120件 → 75件
つまりChatGPTは、本来は別のデータとして残すべき5件まで同じ顧客として統合してしまったことになります。
表記ゆれや重複を多く見つけられた一方で、データを整理しすぎてしまうケースもあったということです。
ここは今回の検証で最も重要なポイントです。
「要確認」にすべきデータまで統合されていた
では、ChatGPTはどのようなデータを間違えて統合したのでしょうか。
今回の顧客リストには、あえて**「同じ顧客にも見えるけれど、Excelの情報だけでは断定できないデータ」**を含めています。
たとえば「株式会社南山食品」のケースです。
このデータでは、
- 会社名が一致
- 担当者名が一致
- 電話番号が一致
していました。
ここまで見ると、同じ顧客に見えます。
しかし、さらに確認すると、
住所が違う
メールアドレスも違う
という状態でした。
会社名や電話番号などが一致していても、住所とメールアドレスという別の情報が食い違っています。
そのため、今回用意した正解データでは、同一顧客と断定せず「要確認」として残すケースにしています。
ところがChatGPTが生成した修正後のExcelでは、このデータが既存顧客へ統合されていました。
同じように、本来「要確認」として残すべきデータを統合してしまったケースが5件見つかりました。
今回のような顧客データでは、重複を見逃すことも問題ですが、本当は別の顧客だったデータを1つにまとめてしまうことの方が危険な場合もあります。
そのため、「重複をたくさん見つけられた=精度が高い」とは単純に判断できません。
ChatGPTの「説明」と実際のExcelが食い違っていた
そして今回、誤統合そのもの以上に注意したいと感じた点があります。
それは、ChatGPTの回答と実際に生成されたExcelの内容が一致していなかったことです。
ChatGPTは回答の中で、
判断が危険なものは統合していません。
と説明していました。
さらに、生成されたExcelの「整理サマリー」でも、住所やメールアドレスが異なるものについては自動統合していないという説明がありました。
この説明だけを読むと、
「判断が難しいデータはきちんと残してくれた」
と思ってしまいます。
しかし、実際の修正後Excelを正解データと照合すると、該当するデータの一部は統合されていました。
つまり今回の検証では、
ChatGPTが「こう処理しました」と説明した内容と、実際にExcelへ行った処理に食い違いがありました。
これは実務で使う場合に特に注意したいポイントです。
AIにExcelの修正まで任せる場合、回答文だけを読んで「問題なく処理できた」と判断するのではなく、変更履歴や実際に生成されたExcelそのものを確認する必要があります。
今回の検証では、正解データを用意して答え合わせしたことで、この食い違いを見つけることができました。
一方で「似ているだけの別顧客」は統合しなかった
もちろん、ChatGPTがすべての重複判定に失敗したわけではありません。
今回のExcelには、会社名が同じ、または非常によく似ているものの、
- 住所
- 担当者
- 電話番号
- メールアドレス
などが一致しないデータも含めています。
こうしたデータについては、ChatGPTは会社名だけを見て同一顧客と判断せず、「要確認」として残していました。
また、「株式会社/㈱/(株)」の違いや、電話番号のハイフン、担当者名の空白など、明確な表記ゆれについてはかなり細かく見つけられています。
今回の結果を整理すると、次のようになりました。
| 内容 | 結果 |
|---|---|
| 明確な表記ゆれの発見 | 得意 |
| 明確な重複の整理 | かなりできた |
| 名前が似ているだけのデータ | 慎重に判断できた |
| 複数の情報が一致・不一致する微妙なケース | 誤統合が発生 |
という傾向が見られました。
同じExcelをGeminiにも渡してみた
せっかくなので、ChatGPTだけでなくGeminiにも同じ検証を行いました。
条件をできるだけ揃えるため、同じExcelファイルと同じプロンプトを新しいチャットでそのまま送信しています。


今回の検証では、約50秒後に、
私はテキストベースのAIです。そちらに対応できる機能がありません。
という回答が返ってきました。

そのため、今回使用した環境では、ChatGPTのように顧客リストを整理して修正後のExcelを作成するところまでは進められませんでした。
※これは「GeminiはExcelを扱えない」という意味ではありません。利用するモデルや機能、環境などによって結果が異なる可能性があります。今回はあくまで、同じExcelと同じプロンプトを使用した今回の検証結果です。
ChatGPTに顧客リストの整理を任せて大丈夫?
今回の結果をまとめると、評価は次のようになりました。
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 表記ゆれの発見 | ◎ |
| 明確な重複候補の発見 | ○ |
| 表記の統一 | ○ |
| 変更履歴の作成 | ◎ |
| 修正済みExcelの作成 | ◎ |
| 曖昧なデータの判断 | △ |
| 人間の確認なしでそのまま使用 | × |
今回の検証では、表記ゆれの発見や明確な重複の整理、変更履歴・修正済みExcelの作成まで、ChatGPTだけでかなりの作業を進めることができました。
特に、120件のデータを人間が一行ずつ見比べることを考えると、最初の整理や重複候補の抽出をChatGPTに任せることで、作業量を減らせる可能性があります。
一方で、正解データとの比較では5件の誤統合が見つかりました。
また、ChatGPT自身は「判断が危険なものは統合していない」と説明していたため、回答文だけでは誤統合に気づけなかった可能性があります。
顧客情報の場合、重複を見逃すことも問題ですが、別の顧客を同じ顧客として統合してしまうと、元の情報を失う可能性があります。
そのため、ChatGPTに顧客リストの整理を任せる場合は、元データを残したうえで、変更履歴と修正後データを人間が確認してから反映する使い方が安全だと感じました。
前回は「Excelの仕組みを理解できるか」も検証
MUGIN AI LABでは以前、前任者から引き継いだExcelをChatGPTにそのまま渡して、シートの役割・数式・毎月の更新方法・壊れやすい場所まで理解できるのかも検証しました。
「前任者のExcel、ChatGPTだけで引き継げる?実際のファイルで検証してみた」
https://muginailab.com/chatgpt-excel-handover/
今回の記事と合わせると、
「Excelを理解する」→「Excelのデータを実際に整理する」
という2つの使い方を比較できます。
まとめ:ChatGPTは顧客データ整理の「補助役」として使う
今回、120件の顧客リストをChatGPTに渡したところ、約3分35秒で表記ゆれの発見から重複整理、変更履歴、修正後Excelの作成まで進めることができました。
ここまで自動で進められるのは便利です。
しかし、正解データと比較すると、
正解:120件 → 80件
ChatGPT:120件 → 75件
となり、本来残すべき5件まで統合していたことが分かりました。
さらに今回注意したいのは、ChatGPT自身が「判断が危険なものは統合していない」と説明していたにもかかわらず、実際のExcelでは一部が統合されていた点です。
そのため、現時点では、
ChatGPTに表記ゆれや重複候補を探してもらう
↓
修正案や変更履歴を作ってもらう
↓
人間が要確認データと変更内容をチェックする
↓
問題がなければ実際のデータへ反映する
という使い方が現実的だと感じました。
今回の検証では、ChatGPTは顧客データ整理を完全に任せられる「自動処理ツール」というより、人間が確認する前の下準備を大幅に進めてくれる補助役として使うのがよさそうです。
面倒な「探す・整理する」はAIに任せ、データを消したり統合したりする重要な判断は人間が行う。
顧客データを扱う場合は、この役割分担が特に重要だと思います。
Excelの「分析」もChatGPTに任せられるのか検証しました。
今回の表記ゆれ・重複整理に続いて、600件の売上データを使い、月別・商品別・担当者別の集計やグラフ作成までできるのか実際に検証しています。


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